AKANE
 しかし、赤と黒の奇抜な胸甲の兵達は、フェルデンの剣の前に次々と薙ぎ飛ばされ宙を舞い、アザエルの無慈悲冷酷な血の剣の前に真っ赤な血飛沫を巻き上げて倒れていく。赤き竜は舞い上がり、頭上から炎を吐き出し兵に浴びせ掛けた。
 王都は今、地獄絵図と化していた。
山のように折り重なってゆく屍の上を、アザエルの碧い髪が華麗に舞い、それとは対照的なフェルデンの剣が力強く振りおろされていく。その美しさは、この光景に不似合いな程の異様さを放っている。
「フェルデン陛下! クロウ陛下! 我々もお供します!!」
 突然神兵の人ごみの向こうから聞こえた聞き慣れた声に、フェルデンは振り返った。
「アレクシ!!」
 白銀の獅子に跨り、剣を振り翳して現れたサンタシ騎士団の三番隊隊長の騎士が、今、数人の神兵を薙ぎ倒した瞬間であった。
 フェルデンは、この騎士の他にも多くの知った顔が駆けつけてくれたことに気付いた。
 師である屈強な剣士ディートハルトは、崩れかけた建物の上に上り、矢を射る神兵を大剣で叩き伏せている。そして、白銀の獅子の上から槍を一振りして数人の敵をやり込めているのは黒の騎士団指令官補佐、ライシェル・ギーである。女性とは思えない程無駄の無い動きで、的確に相手の攻撃をかわし倒してゆく騎士は、黒の騎士団唯一の女性騎士、タリア。その他にも、見覚えのある騎士達がこの悲惨な状況の中で怯むことなく勇敢に剣を振るっていた。
 心強い助っ人に、フェルデンは心から感謝していた。
 その中で、クロウは静かに瞳を閉じていた。
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