AKANE

4話 王の狙伺

 夢を見ていた。
「わたしの国はね、身分の違いなんかないんだよ。みんな平等に仕事をしたり学校へ行ったりしてすごく平和に暮らしてて」
 にこりと微笑む少女の顔は、本当に幸せそうだ。
「では、君の国では王がいないと?」
 こくりと頷いた少女の反応に、驚いてフェルデンは目を丸くする。
「それでは、誰が国を治めるんだ?」
 少女のきょとんと見つめ返す茶味がかった黒い瞳は、不思議な色を秘めていた。
「みんなが代表に選んだ人が期間限定で政治を引っ張る方法を執っているかな。わたし達の国では、総理大臣っていうんだけど」
 少女の話すことはこのレイシアでは考えもつかないような興味深いものばかりだ。
「それは凄いな・・・」
 フェルデンは部屋の窓のから立ち上がると、くるりと少女に向き直った。
「君はどんな環境で暮らしていた?」
 朱音はふっと顔を綻ばせると、
「私の家族はねえ・・・」
と、生き生きとした表情で話し始めた。それだけで、この少女がどれだけ幸せな暮らしを送っていたのかが想像される。
「わたしの家族は、お父さん、お母さん、それと弟の真咲(まさき)の四人暮らしでね、お父さんは空手の道場で師範をやってるんだよ。で、お母さんは料理が苦手なただの主婦。弟の真咲はチビで生意気だけど、お父さんの道場をいつか自分が継ぐんだ、って勝手に思い込んでるお馬鹿さん」
 フェルデンは知らずに口元が緩んでいることに気付いてはいなかった。
 空手や道場、師範、などの聞き慣れない言葉の意味を訊ねると、朱音は空手は武器を使わない武術のことで、道場は訓練場、師範は先生のことだと懇切丁寧に教えてくれたのだった。
  
 ズキリと傷が痛み、フェルデンは懐かしい夢から目を覚ました。
 どれだけ眠っていたのだろうか。
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