AKANE

5話 覚醒


 喉が焼けるように痛む。
「・・・う・・・」
 身体中がとにかくなんでもいいから水分を、と欲している。
 漏れた声はひどく掠れていた。堪らずに両の手で喉を引っ掻くように掴む。
 しかしその手さえもまるで他人のものであるかのように、重く、気だるい。
 とても奇妙な感覚だった。自分の身体なのに呼吸さえもうまくできず、自然と息が荒くなる。
 ひどい疲労感と苦しみの中で、周囲がざわざわと騒ぎ始めるのがわかった。
「クロウ殿下がご復活なされた・・・! 儀式は成功した・・・!!」
「直ぐに医師を呼んでまいれ!」
 盛大な歓声とともに、人々が慌しく周囲を歩き回る音、そしてこちらへ駆け寄る音。
 朱音にはその全てがもうどうでもよく感じられた。ただ、今は喉が渇いた。
これまでの人生で これ程までに渇きを覚えたことはない。強い渇きは、時として痛みにも変わる。
 苦しみに悶えていると、ふと誰かが朱音の背を優しく腕にもたせ掛け、その力の入らない身体を起こすと、唇に何かをそっと流し込み始めた。こくりと一口飲み込むと、それが水であることに気付く。
「おかえりなさいませ」
 そっと耳の傍で囁く声が聞こえたような気がした。
 入りきらなかった水はタラリと唇の端から零れ落ち、ポタポタとその雫が滴り落ちていく。朱音は欲するがままに、その水をこくこくと咽返りながらも飲み干していった。
「・・・もう・・・いい・・・」
 なんとかそう言い終えると、朱音はぐったりした身体でうっすらと目を開けた。まるで初めて目を開けた赤ん坊のように、視界がぼやけて見えにくかったが、じっと目を薄めてしばらく見つめていると、少しずつ視野がはっきりと見え始めた。
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