AKANE
「ディートハルト、貴方ならそう言ってくれるとわかっていた。ありがとう」
ごほんと罰が悪そうに咳払いをすると、ディートハルトは但し条件がある、と一言言った。
フェルデンはまさか嘗ての師に騎士団の指揮官の代理を頼むのに条件を出されるなど考えてもいなかったものだったから、はたと握り締めるその手を止めた。
「旅は道連れと言いますぞ。騎士団の中から、信頼のおける部下を一人、供として連れてお行きなされ」
ディートハルトの意図が何なのかはフェルデンには直ぐに理解できそうにはなかったが、この経験豊富な男のアドバイスで役に立たなかったことはない。
「ユリ、ついて来てくれるか?」
フェルデンはすぐ脇で草の葉についている虫を観察している小柄な青年騎士に訊ねた。
二つ年下のユリウスは、農民の出身で、騎士としては特殊だったが、ディートハルトの兄弟弟子として共に過ごしてきた友と呼べる特別な存在だった。
そして何より、小柄でありながらもその剣の腕は確かで、フェルデンは誰より彼を信頼していた。
「へ?」
きょとんとモスグリーンの瞳を長身の二人の男達に向けると、葉についていた虫がパタパタと羽を鳴らしながら飛び立っていった。
「ユリウスよ、幼き頃から共にあるお前なら、フェルデン殿下の最高の部下として、友として、きっとよ良き手助けができるだろう」
小柄なユリウスはゆっくりと立ち上がると、白い歯を出してにっかりと笑った。
「あったり前じゃないですか! おれ以外の誰にフェルデン殿下の相棒が務まるというんです。大船に乗ったつもりでいてください」
胸を張って言い切ったユリウスに、師であるディートハルトは、
「このお調子者めが!」
と頭を小突いた。
「って!」
ごほんと罰が悪そうに咳払いをすると、ディートハルトは但し条件がある、と一言言った。
フェルデンはまさか嘗ての師に騎士団の指揮官の代理を頼むのに条件を出されるなど考えてもいなかったものだったから、はたと握り締めるその手を止めた。
「旅は道連れと言いますぞ。騎士団の中から、信頼のおける部下を一人、供として連れてお行きなされ」
ディートハルトの意図が何なのかはフェルデンには直ぐに理解できそうにはなかったが、この経験豊富な男のアドバイスで役に立たなかったことはない。
「ユリ、ついて来てくれるか?」
フェルデンはすぐ脇で草の葉についている虫を観察している小柄な青年騎士に訊ねた。
二つ年下のユリウスは、農民の出身で、騎士としては特殊だったが、ディートハルトの兄弟弟子として共に過ごしてきた友と呼べる特別な存在だった。
そして何より、小柄でありながらもその剣の腕は確かで、フェルデンは誰より彼を信頼していた。
「へ?」
きょとんとモスグリーンの瞳を長身の二人の男達に向けると、葉についていた虫がパタパタと羽を鳴らしながら飛び立っていった。
「ユリウスよ、幼き頃から共にあるお前なら、フェルデン殿下の最高の部下として、友として、きっとよ良き手助けができるだろう」
小柄なユリウスはゆっくりと立ち上がると、白い歯を出してにっかりと笑った。
「あったり前じゃないですか! おれ以外の誰にフェルデン殿下の相棒が務まるというんです。大船に乗ったつもりでいてください」
胸を張って言い切ったユリウスに、師であるディートハルトは、
「このお調子者めが!」
と頭を小突いた。
「って!」