【短編】裏山の大木

…老人は、笑っていた。自分の手を見つめて。


そして、その笑いを噛み殺すように呟いた。



「あの時は…辛かったなぁ。
嬉しくて、思わず笑みがこぼれてしまいそうで。
笑いすぎて、涙が零れそうで。
それを我慢していると、頬が引きつって、痛くて痛くて。」



そう言い終わると、老人は、また笑い出した…。




そうそう、俊の死体は、まだ見つかっていないそうだ。




―end―


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