マザーレスチルドレン
手術台の上で眠るケンイチ。


トラウマのフラッシュバックで苦悶の表情を浮かべている。


「見てみて!この子拳を握りしめてるよ。まるでファイティングポーズとってるみたいだ。父さん、この子の生存に対する執念はすごいよね」


「そうだな……」


「全身全霊で『生きいていたい』っていってる。あれだけの仕打ちを受けたのにまだ生きていたいって……」


「……」


「ねえ、とうさん、この子を生かしてあげようよ」


「……しかし」


「この子は確かに罪を犯したかもしれないけど、罰はもう十分受けてるよ」


「……」


「罪は罪だけど…… そうしないと自分が殺されちゃうから、そうやっただけでしょ」


「……そうだな」


「じゃあ、決まりだね! そうだ! 新しい名前を考えてあげないとね。うーん、ハルトはどうかな。この子の将来が晴れやかで春の日のように穏やかであるように……」


「ハルトか……、だがエイジはそれでいいのか?」


「うん、僕はこの子に比べたら何倍も幸せだった。よかったよ、父さんの子供に生まれて」


「エイジ……」
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