マザーレスチルドレン

遠雷の音

「全員おりろ」


ヒラヤマは短くいった。


「一体俺たちに何の用があるんだ! 」


マスターが怒鳴る。


互いに沈黙のしたままの数十秒が過ぎた。


雨粒がアスファルトの路面に吸い込まれていく時の匂いがした。


ヒラヤマはキルスイッチでモーターの電源を切り、


左足でサイドスタンドを蹴りだすとゆっくりとバイクを降りた。


着くずしたカーキのフィールドジャケット、迷彩のカーゴパンツ。


身長は2メートル近くあるが、一連の動作はしなやかで、


その姿は野生動物それも肉食系特有の獰猛さと比類ない威圧感をまとっていた。
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