マザーレスチルドレン

東和食堂

「いらっしゃい。おおーひさしぶりだねぇ」


仏頂面で仕込みをしていたマスターは、


ハルトの顔を見ると笑顔になった。


「どう、調子は?」


カウンターの中の椅子に腰掛けてマスターはいった。


「別に変わった事はないよ。マスターの方はどう、忙しい?」


この居住区の中心部に当たる東和町にある東和食堂、


ハルトはこの店の常連だった。


店のカウンター席の一番奥に腰掛けながら


ハルトは携帯電話を取り出した。


携帯電話には着信の履歴も新着メールの表示もなかった。


「相変わらず暇よ、今日はハルが初めてのお客。


そろそろこの店も潮時かな」


マスターは頭巻いたバンダナをとりながら立ち上がった。


「最近ご無沙汰だったけど元気にしてたの?


うちの嫁さんも心配してたよ」


「うん、最近なんだか疲れ気味で何をするにも


億劫になっちゃってね。


何かやっぱ少しづつ内臓が腐ってきてるのかな」

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