華と…
「わかった」
そう言うと、父は静かに話し出した。
「わたしが忙しい中、こんな遠い秋田までわざわざ出向いて来たのは、華、お前を連れ戻すためだ。
華、結婚とは、好いた惚れたで長続きするものじゃあない。
ましてお前は、二階堂家の跡取りとして、何不自由なく育った只の世間知らずだ。
こんな知り合いもいない遠い土地で、慣れない造り酒屋の仕事を手伝いながら、やって行ける訳がない。
お前は、わたし達の元で、手厚い保護の下、望まれた結婚をすれば良い。
お前の母がそうであったように。
幸せとは、そういう安定の元で育まれる感情なのだ」