武闘派
「今度呼び出された時は、1人で行くなよ。」

私の家の前で、やっちゃんは念押しした。

「う、うん。」

これからも呼び出されたりするのかな…。

「なんか不安なことあれば、俺に言って。千穂は女の子なんだから。」

大丈夫だよ、なんて言えない状況が続いていたから、私は素直に頷くことしか出来なかった。

「じゃ、明日な。」

「うん。明日ね。」

隣の家に入って行くやっちゃんの後ろ姿を見ていると、やっちゃんは突然振り返った。

「明日水泳の授業だな。」

そう言ったやっちゃんの顔は、さっきまでの真剣なものではなくて、明らかに私の反応を楽しむものだった。

「雨、降ればいいのに…。」

私の呟いた言葉に、やっちゃんは意地悪く笑った。
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