その信頼は「死ね!」という下種の言葉から始まった[エッセイ]
◆その信頼は「死ね!」という下種の言葉から始まった
 恩師は、私が通う中高一貫女学校の、国語教師 兼 演劇部の顧問でいらっしゃった。


 初めて会ったのは、中学入学して最初の国語の授業。

 頭に少しハゲのある、外見はいわゆる昔の漫画に出てくるような、カミナリオヤジ・頑固ジジイという感じの先生だった。

 問いを間違えた生徒に対して一言


「死ね!」


 ──なんや、この嫌な先生!


 それが第一印象。

 いつもむっつりした顔で、叱るときはツバが飛ぶくらいの勢いで怒鳴り散らす。

 中学一年生だった私には本当に恐ろしくて、周りの生徒からも当然恐れられ嫌われていた。

 その先生の授業前は、予鈴が鳴る前から机の横で生徒が整列し、静まり返った教室でカツーン、カツーンと足音が近づいてくるのをビクビクしながら待っていた。

数年前のドラマ「女王の教室」の鬼教師を地でいくような光景が普通にあった。


 生徒をしつけるために厳しくしている。

 まだ12歳の私でも、それは容易に理解できた。


 ──でも「死ね!」まで言わなくてもええやん。もっと別の言い方できんのかな。


 そんなことを思ったものだ。
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