教えて!恋愛の女神様
 裕矢はガサリと衣擦れの音を立て私に近づいてきた。私は彼が何をしたいのかすぐわかった。
(たぶん、キスされる……)
考えいた通り、彼の顔はどんどん近づいてくる。ためらいは、ない。
 とたん、翔太の顔が脳裏をよぎった。私は『このまま流されてはいけない』と思った。
 私は唇が触れる瞬間、顔をそらした。裕矢が驚き息を止めたのがわかった。
 しかし、どうしても裕矢のキスを受け入れることができなかった。
「……少し、時間をください」
「少し?」
「はい。いろんな事にケリをつけなくちゃいけないから」
「わかった」
ようやく裕矢は緊張をほどいた。私の髪をもう一度なでれば、車を発進させた。
 私は助手席で静かに自分と向き合った。
(もう決めなくちゃ……)
そう自分に言い聞かせながら。



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