教えて!恋愛の女神様
裕矢は玄関の鍵を開けると、私を中へ入れてくれた。家の中はやはり真っ暗で、どこも電気はついていなかった。すると突然明るくなった。見れば裕矢が電気をつけてくれていた。三和土の上には一足も靴がなかった。
「俺の部屋は二階なんだ」
裕矢はスリッパを私の目の前に一足出すと、自分も一足出しはいた。そして私の腰に手を回すと、ともに階段を上ろうとした。
 とたん、ハッとする。
(も、もしかして……一緒に寝るの?)
まだつきあってもいないのに、早くも男と女の関係になりそうですごくドキドキした。
(いや、このままじゃダメ!このままエッチな事したら、これまでと同じ展開になっちゃう!)
「あの……」
「どうしたの?」
「やっぱり、泊めてもらうのやめます」
「えっ?」
「だって私と裕矢さん、まだ付き合ってもいないんですよ。なのに同じ部屋で寝て何かあったら、きっと嫌な空気になると思うんです。もう、そういう思いはしたくないんです」
「いや、知佳ちゃん。あのさ……」
「それに、お父さんやお母さんに軽い女だって思われたくありません。これまでずっと軽い女だって彼氏に思われてきたから、もうそんな人生を送りたくないんです」
「あの、だからね」
「お金貸してください。そしてタクシーで家に帰ります。明日はどこか泊めてくれる友達を探して、できるだけ早く家を探します。ワガママ言ってすいませんが、よろしくお願いします」
頭を深々と下げた。裕矢が戸惑っているのがわかった。 
 すると、カチャリとドアの開く音が聞こえた。続いて足音が近づいてきて止まったので下を見れば、パジャマ姿の裕矢の父が困惑した表情で立っていた。
「こんな夜中にどうした?」
私は心臓が止まりそうなほどドキドキした。
 裕矢のお父さんに言われるまま居間へ入ると、二人して入り口のそばに立った。お父さんは電気をつけると、穏やかな表情で言った。
「まあ、座って」
そして少しの間、キッチンへ消えた。私と裕矢は部屋の真ん中にあるソファーに並んで腰を下ろした。すると、津波のように不安が押し寄せてきた。私は太ももの上で強く手を握ると、目をつぶった。





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