しあわせなら手をたたこう
彼は頭が真っ白になった。
まだ大学一年で、結婚なんかおろか子育てなんてできない。
何かの間違いであってくれと願ったが、次の年の夏に女の子が生まれた。
両親とも話し、彼は大学を休学し、働くことにした。
辞めるのはもったいないと両親に言われたからだという。
そして彼は建築現場のアルバイトで生活費を稼ぐことにした。
肉体労働の毎日。
しかし、妻は何もしようとしない。

「もうだめだと思ったよ。でも栞は守らないとって思ってた。母親は俺がいない間、完全にネグレクトだったんだよ。だから栞を連れて今度こそ別れることにしたんだ」
そこで地元に戻ってきてどうしようか考えている時に私を見かけたらしい。
「とりあえず、今後のことを考えなきゃいけない。仕事を探そうとおもうんだけど、俺の両親も働いてるから、栞は預けなきゃいけないと思って」
「この5年大変だったんだね…わかった。園長先生に聞いてみるね。でも、大学は続けないの?」

そう聞くと彼は今日一番悲しそうな顔をした。
「続けたいけど、栞の世話があるし、こんなことになっていつまでも親に頼ってられないし…」
「それなら、誰も居ないときは栞ちゃんうちであずかるよ!うちならお母さんいるから、私が夜遅くても大丈夫だし」
「いや、悪いよ。藤森のお母さんにまで迷惑かけるなんて」
「大丈夫!谷口くん頑張りすぎじゃない?こないだも思ったけどすごい疲れてるでしょ。子育ては誰かと協力してやらないと体壊しちゃうよ。うちのお母さんも元保母だし、大丈夫だょ」

私は谷口くんを助けたい一心だった。
高校の頃の彼に戻って欲しかった。
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