おしゃべりな王子様
「どうしたの?」

俺が少し前の記憶に思いを馳せていると、凜がスプーンを運ぶ手を止めた。


「あぁ、このジャガイモ……」


まさか有紀のカレーを思い出していたなんて言えず、俺はスプーンでジャガイモをすくった。


皮が所々残っているかと思えば、明らかに皮を剥き過ぎてえぐれている部分がある。

ジャガイモの皮もろくに剥けない奴だけど、俺にはそれが嬉しかった。

不器用ながらも、一生懸命作ってくれた証拠だから。

「前より上手くなったな。」

不安そうに、スプーンの上のジャガイモを見つめる凜の顔がパッと笑顔になる。

あぁ……この笑顔だ。

この笑顔の見れるなら、塩鯖入りのカレーでもいい。

俺は、凜を選んで良かったんだ。


「凜、ありがとうな。」


俺は、幸せな気持ちでカレーを口に運んだ。


その味はやっぱりマズかった。
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

無口な王子様

総文字数/73,734

青春・友情205ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
あの日あの喫茶店で運命のように出会いました。 私の心を奪って、私の人生を大きく変えてくれたのは 無口な王子様でした。 <新人賞エントリー作品>

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop