政府より魔女へ

プロローグ「政府より魔女へ」

「魔女ねぇ‥‥‥」

その森だけが、かつての地球の自然を美しく残していた。

人は言う。

魔女がそこにいるのだと。

誰もそこへ近づこうとしなかった。
それは、誰もが魔女を恐れてきたからだ。

ほとんどの親は、いけないことをした子供にはこう言う。
「魔女に呪い殺されるわよ」と。

別にそれが真実だとはだれも思ってはいない。

ただやはり、もはやコロニーなくては生きられないこの悪質環境の中で、今も何百年も昔の風景が、コロニー外の一部に青々存在している。

それはまさに、信じがたい恐怖なのだ。

「局長、何で僕なんすか」

部下、七丘(ﾅﾅｵｶ)は嫌そうに訴える。

「いいから。これも世のため人のため。成功すれば出世間違いなしだ。な？」

「なんで今頃になって魔女とコンタクトなんか」

「うーん。ゴキブリ退治は大変だからな」

「局長が自分で行きゃいいのに‥‥」

「最初は様子を見てこい。それから考えよう。ほれ、政府の犬よ、覚悟して行け。」


俺の名前は、ｼﾞｽ･ﾊﾞﾘｺｯﾄ。

治安局局長という肩書きを、はや27という若さで持つ政府の犬だ。

この仕事に、なんの誇りも持っていない。

きらいなわけではない。自分の力が発揮できるだけの場所という、そんな浅い満足感。

そして感じるのは、この国は、もう変わらないだろうということ。

変えようとも思わない。

そんな、つまらない商業国家だ。

いずれ自滅していく。

そう思った矢先のことだ。事件が発生したのは。


だれかは変革を求めたらしい。


俺は政府の決定で、止むを得ず魔女に協力を要請することになった。


政府は言う。

“魔女計画”と。


恐れてきた魔女は、美しい人だった。

彼女は言う。


「お茶でもいかが？」

と .....