政府より魔女へ
その言葉の直後、俺の腕をつかむリラの手に力がこもる。

そして、俺の後ろを凝視していた。

俺はそちらを振り返る。

そこに、ホウキを持って立っている女がいた。

「無様だな」

リラは黙り込んで、その女を睨む。

すると、俺の手をつかんで池から浮き上がり、ともに岸へと舞い降りた。

「水の力を借りなければならないほど衰弱しているようだなぁ? 『リラ・東雲・ダル・B・ウェイン』」

俺ははっとした。

魔女に名前を知られる。それは死に値するものだ。

リラは悔しそうにうつむいていた。

「おろかな魔女」

女は笑みを称え、俺をちらりと見た。

「おまえの母も、人間に心を奪われていたなぁ? その母の魔法で創られた魔女。おまえは母『リラ・東雲・ダル・B・ウェイン』の魔法。まさか、そのことを忘れてはいまいな?」

俺はとっさにリラを見る。

彼女はうつむいたままだった。

「うまく生まれ変わったものだ。まさか魔法になろうとは」

女はそう言って近づいてくる。

「けれど所詮ただの魔法だ」

「いい加減にしろ!」

俺はリラを背後にやって怒鳴った。

「リラが『ただの魔法』だ? 彼女は生きてる。血も流すし、心だってある。それを魔法だって? 彼女は人間だ。あんただって魔女である前に一人の人間だろう」

「私は魔女だ! 醜い人間と一緒にするな!」

女は腰に結わえた剣を抜き、俺に切っ先を向けた。

それはいつかと同じように宙に浮き、放たれる―――――!

「ジス!」





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