恋する事件簿【完】
「泣くほど嫌やったん?」



「好きじゃないし…いきなりだし…っ…」



「俺の時は、泣かんかったよな」



「…っ…」



俯く私に、難波は「泣かせるつもりやなくて」と、頭を掻いた。

私は無意識に、難波のワイシャツを掴んだ。

香水の香りは、気付かないうちに、ドキドキと言うよりも、安心感に変わっていた。



「芽依実…」



初めて名前を呼ばれて、私はゆっくりと顔を上げた。

目が合うと、段々と顔が近付く。



「――っ!」



目を閉じてる難波。

キスだとわかってる。

でも、嫌じゃない。
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