恋する事件簿【完】
誰が通るかわからない廊下ながら、私はシャツを掴む手に力を入れ、目を閉じた。

角度が変わると、少し開いた唇から、舌も入って来る。

今の気持ち、淡い初恋の高校時代に似てる。

ドキドキして。

慣れないながらに、彼に合わせてキスをした。

好きだから、出来る事。

私が、難波を好きだから――…。

唇が離れると、抱き締められた。

頭を撫でられ、私の心が落ち着いた。



「お前、何でキス出来たん?」



「…わかってて訊いてない?」



声のトーンでわかる。

絶対ニヤニヤしてる。

私は難波を叩き、腕の中から逃げた。
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