いつか君を忘れるまで
彼女の横に腰掛けると、覆ったままの手が身構えたのが分かった。

「話したら、少しは楽になるかもよ?」

俺は、警戒心を和らげようと、努めて優しく丁寧に言った。

横顔を見つめると、手の奥に見える目尻が涙で光っているのが見えた。

俺は、ベッドサイドにあるボックスティッシュに手を伸ばした。

「ごめん。泣かせる気は無かったんだ。何か力になれるかなって思っただけ。」

そう言いながら、ティッシュを差し出した。

「ありがとう。」

ミホちゃんは、そう言ってティッシュを受け取ると、涙を押さえた。

俺は距離感を保ったまま、心だけそっと彼女に寄り添った。
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