赤い狼 参
「何…ですか?」
そんなに真剣な顔をされたら、こっちまで真剣な顔になってしまう。
「すまないが、少し頼みたい事がある。」
「あ、はい。私にできる事なら……。」
少し緊張しながら男の人を見上げると、男の人はニコッと笑って口を開く。
「俺、腹へって死にそうなんだ。」
「へっ?」
いきなりの言葉に変な声が漏れてしまう。
何が言いたいんだろう…。
「だから…お昼ご飯を作って欲しいんだけど…。」
申し訳なさそうに目を伏せる男の人。
その様子を見ていたら
「ぃぃですよ。」
何故か勝手に返事をしていた。
…あっ。
咄嗟に口を両手で押さえる。
「本当か!?」
でも、嬉しそうな表情をしてそう言われると
「はい…。」
二つ返事で返すしか術がない。
「ありがとな!」
「わわっ。」
急に抱きついてきた男の人に驚いてバランスを崩しそうになる。
「あ、キッチンは好きなように使ってぃぃからな。」
男の人はそのまま私を離すと、上機嫌な様子でキッチンへと背中を押して案内してくれた。