赤い狼 参
こめかみを押さえている私を見て、実がため息をつく。
「稚春、諦めな。」
「…。」
他人事だと思って。
塚、実は青木くんに逢いたいんだから私が逃げたら困るでしょ。
本日、何度目かのため息をつく。
すると
「あ~、来たぁ~。」
普段より高めの香の声が聞こえた。
「えっ、何処何処!?」
「痛い痛い痛い。」
興奮した実が私の上に乗り上げて窓を覗く。
おいコラ。
ふざけんなよ。
私の上に完全に乗り上げている実を下から睨む。
「あ、絶対稚春を探してるよ!」
実がキャー!と私の背中をバシバシと叩く。
だから痛いって。
再び実を下から睨むと実はそんな事を全く気にせずに
ほら、見てみてよ!!カッコぃぃでしょ!?青木くん!!
と興奮しながら実は私の上から退き、凄い力で私の背中を押す。
「実、さっきからぃぃ加減にしてよ。」
さすがにここまで自分勝手に行動されるとムカつく。
ムッと口を紡ぐと実が
ごめんね。でも青木くん、待ってるよ。
と私の顔を覗いてきた。