赤い狼 参





「学。」



「何だ?司。」




司が学を見つめる。




司の目を見て後悔した。



さっきまで学に向けていた司の表情ではなく、冷たい表情だったから。



司が…怒っている。



初めて見た私でも分かる程に司の顔は無表情で…――怖かった。




「学、俺が何で怒ってんのか分かるよね?」




ニコッと笑った司の表情は笑ってはいなかった。


顔が笑ってなくて。




一歩、また一歩と近付いてくる司に足が震える。




「分からねぇな。」




凄く怒っていると分かっている筈なのに学は司を挑発するように話す。




そして




――バンッ――




「学っ!!」




私達の目の前に来た司が学を蹴り飛ばした。





飛んでいった学は壁にぶつかって何処かを強く強打したのか、倒れこんで動かない。




「学!」



「大丈夫、そんなに強くしてないから。」




学の側に行こうと後ろを振り向くと司が私の手を掴んだ。





< 379 / 410 >

この作品をシェア

pagetop