赤い狼 参






それから、何度も稚春を抱き締めてぇ衝動に駆られた。




…思ってたより、7年間の想いは重かったらしい。




「祐。」



「何?」



「逢…いたかったっ。」




目を潤わせて俺を真っ直ぐ見つめてくる稚春を見て、どうしようもなく、困った…。





逢いたかった。




でも、逢いたくなかった。





そんな気持ちが交差する。





「俺も…逢いたかったよ。」





迷った挙げ句、"俺も。"





こんな結論しか出せなかった。




稚春を悲しませてしまう事だけはしたく無かったから。




でも、俺の言葉を聞いた稚春は、少し、悲しそうに顔を歪ませた。





…何でそんな顔をするんだ。



俺が、何かいけない事言ったのか?




必死に頭を回転させる。




だけど、何も浮かんでこねぇ。



…駄目だ。





こんな時でも役に立たねぇ俺の脳ミソ。




本当に…昔、"アイツ"に言われた通りだな。






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