赤い狼 参

:記憶の断片






―――十年前。




庭で遊んでいた時に私は、屋敷に両親と一緒に来ていたある一人の男の子に出逢った。




「何してるの?一緒に遊ぼっ!」




話し掛けると最初は戸惑ってこっちに来なかったけど、しつこく話し掛けていると私に慣れたらしく


司の両親が帰るまでその日は一緒にかけっこしたり、砂遊びをして遊んだ。



それから毎日一緒に遊んでは楽しく過ごした。




私はその男の子の事を"つーちゃん"と呼んで、つーちゃんは私の事を"ちぃちゃん"って呼んでた。



つーちゃんと遊ぶのが凄く楽しくて毎日、朝起きると楽しみにしながら庭に出てつーちゃんを待ってた。




でも、ある日つーちゃんはその日一日、遊びに来なかった。



風邪引いたのかな?って思ってその日は諦めた。



でも次の日も、また次の日もつーちゃんが来る事はなくなった。




私は待ってるのが辛くて、庭に出なくなった。


そして、月日が経つごとにその記憶は薄れていった。




――…その後の出来事は、私にとっては苦しい事しかなかったから。



潰されてしまったんだ。悪い記憶に。






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