赤い狼 参





サラリ、私を驚いた目で見下ろしている司のサラサラな銀の髪の毛を撫でる。




「つーちゃん、だよね?」




そう言って司の顔をジッと見る。


うん、やっぱりつーちゃんだ。




「お前、覚えてねぇって…。」



「今、思い出したの。」




だって、そんなに大きくなってたら分かる訳ないじゃん。


…それに、笑わなくなってるから。




過去に何かあったのかな、と思って口を開くけどそこまで侵入してもぃぃのか迷った末、止めた。




私にだって触れてほしくない過去がある。


司の場合、それと同じ気がするから。




司の横の髪を耳に掛けると、子供の頃の面影が少しだけあった。




「7歳の時以来…だよね?」



「あぁ。」




何も映そうとしないダークブラウンの瞳が窓からの光に照らされて輝く。


少しだけ、昔の司に出逢えたような気がした。




「全然気付かなかったよ。」



「最後に逢ったのが7歳の頃だからな。もう10年も経ってる。」




無表情に戻った司に、もう恐怖心は抱かなかった。




そっか。あれから10年も経つのか。



遠い記憶を思い返す。


あの頃はまだ、楽しかった。




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