天使のキス。
「水嶋くん?
もしかして、わざと手加減してる?
愛里はともかくとして――…
“HIROKO”の新作もいらないの?」


コートの向こう、ニヤリと。
わかりやすく挑発する佐久間健に、オレは言い返すことなんかできなかった。


なぜなら、呼吸をすることすら苦しかったから。


こんな一方的な負けをきすことなんか、今までになかった。


だから、その屈辱を、その結果を。
受け入れることができなかったから。


激しく肩を上下させ、苦しい息を吐くオレに、


「あれ?
いいの?
俺、勝っちゃうよ?
俺のサーブが決まったら、この試合、俺の勝ちじゃないのかな?」


佐久間健は、ニヤリと笑う。

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