天使のキス。
「でも、水嶋くんがかわいそうだから、手加減してあげるね?」


わざと丁寧を装った口調がムカつく。


でも――…


そんな言葉とは裏腹に、奴の放ったサーブは鋭くえぐい角度でコートの隅、ギリギリに突き刺さった。


「あーあ。
手加減してあげたのにな、残念」


手首を回転させ、ラケットをくるりと回す佐久間健が、コート中央に近づいてくる。


そして、差し出されたその手を握り返したとき、オレの頭と心をかすめたのは――…


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