天使のキス。
悠のパパの声色に、マスクの男はちょっと息を飲み、そして続けた。


「嘘だとでも思っているのか?
証拠を見せてやる」


あたし達は、モニターの前に連れて行かれた。


それはどうやら、会場に映し出されたらしく、招待客の中から小さな悲鳴が上がった。


それを見ても、悠のパパは冷静な姿勢を崩さず、静かに言った。


「悠には、生まれた時から言い聞かせてある。
有事の際は、おまえの命より、会社を優先すると」


その言葉に、あたしはもちろん、会場の人達も、そして、マスクの男達も息を飲んだ。


あたしのことは、いい。


悠の本物の婚約者じゃないって、どこの誰だかわからない女の子だって、


画面を通してわかったはずだから。
< 836 / 921 >

この作品をシェア

pagetop