天使のキス。
その証拠に、最初は“息子達”と言っていた悠のパパは、その後、悠のことだけに的を絞って話していた。


婚約者に間違われた女の子なんて、どうなろうと知ったことではないと考えるのはわかる。


でも――…


“息子の命よりも会社を優先?”


――そんな冷たい親が、この世に存在するだろうか?


会場の人達の視線を集めながらも、悠のパパは、冷静に淡々と言葉を紡ぐ。


「私には、全社員と、そして、その家族を守る使命がある。
そのためには、息子の命を犠牲にしても、やり遂げなくてはいけないこともある」


会場は水を打ったように静まりかえった。
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