天使のキス。
「だから、婚約は破棄させてください。
私にもいつか…
それ程愛せる人が現れるのを待ちたいと思います」


彼女は静かに微笑んだ。


その横で、彼女の話をゆっくりと見守っていた紳士が、画面の向こうの悠のパパに言った。


「しかし、娘の件と提携の件は別物だ。
提携はこのままさせてもらうよ?
君のことがよくわかったからね。
捕えどころのない…
何を考えているのかわからない…
そして、油断のできない奴だと思っていたが…。
君のビジネスへの熱い姿勢を見せてもらった。
そして…
ただの冷たい男ではない…と、いうこともね?」


高らかに笑った紳士の向こう、小さく息を吐き、緩やかに微笑む悠の顔があった。
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