コウコウセイ。
「ねぇ、」
「え、あ…嘘、冗談だよね?罰ゲーム?お疲れ様…」
「違うって、これ俺マジだから。そんなこと言われるとショックなんだけど」
優しく笑う彼は、無意識なのか私の手を掴む力を微かに強めた。
それが嘘ではないことを示しているのは嫌なぐらい伝わってくる。
「ま、待って!私を誰かと勘違いしてない!?」
「裕美さん、でしょ?」
「っ!」
息が詰まる。
だって、だって…。
溝越くんって言ったらクラスでも人気の王子様的存在で、
誰もが認めるイケメン。
この前、モデル活動をしている男子だって羨ましいって嘆いてたほど。
なのに…
「返事はすぐって急かすつもりは無いよ、だけど…うん、なるべく早いと嬉しいかな」
「あ…」
何も無かったように去っていく溝越くんの背中を見つめて、
私はただ掴まれていた手がまだ熱を持っていることだけを感じた。