時空を越えて…

元気の源




『失礼しま〜す…』


静かに科学室に入ると薬品の臭いが鼻を刺激してきた


「お前授業は?」


眼鏡をかけた先生が私の方を向いて訊ねた


『ん〜…自習』


「嘘だろ」


『何で分かったの?』

「お前の事なんてみんなお見通しだ」

くいっと眼鏡をあげながら話す先生は絵になっている

『サボりです…』

追い返されると思って俯くとぽんっと頭に手をおいてそっか…と言ってきた
私のお兄ちゃんは優しい…
辛いことがあっても話すまで聞いてこない


『何してるの?』

「実験」

パソコンに向かう先生に着いていきながら訊ねる

『何の?』

「時空間を操ってタイムマシンを造ろうと思ってな」

『夢のある実験だね…』

「お前今馬鹿にしたろ?」

『ううん!凄い凄い!!!』

「たく…それより今日は部活休みだから」

『…何で?』

「実験が優先」


『え〜!!!』


「うるさい!これやるから静かにしろ」


そう言ってポイッと飴玉を投げてきた

『先生…朝も貰ったしさっきも貰った…ポケットぱんぱんだよ』


「貰っといて文句言うな」


『も〜』とかいいながら実はかなり嬉しい
先生から貰った飴は私の元気の源
辛いときも悲しいときもこれを舐めると元気になれる


『先生?』

「ん?」


『ありがとう』


素直にお礼を言うと先生は照れながらおう…と言った

これでまた頑張れる!!!
そう自分に言い聞かせ飴を舐めた



< 4 / 20 >

この作品をシェア

pagetop