嘘婚―ウソコン―
それに対して、麻里子が首を傾げた。

今から何を言うのか、彼女はわかっているのだろうか?

わかっていたら、首を傾げる仕草なんかしないだろうな。

陽平はフッと笑うと、
「――俺さ、結婚してるんだ」
と、言った。

裏で2人の様子を見ていた千広は、耳を疑った。

言った、陽平が言った。

自分と結婚していることを、言った。

「えっ…?

何それ、ジョーダン?」

麻里子の顔から表情が消えたと思ったら、言葉が返ってきた。

どうにか平静を装う彼女だが、心はそうじゃないだろう。
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