嘘婚―ウソコン―
その場でことを見守っている千広も、ビクビクと躰を震わせていた。

自分は特に関係はないはずだけど、躰の震えが止まらなかった。

「あなたたちは息子と結婚するついでに、自分たちの借金を私たち家族に押しつけようとしたのですか!?」

「そ、そんなつもりでは…」

怒鳴る陽平の父親に、麻里子の父親は震える唇を動かして言葉をつむごうとする。

「銀行は経営難で、不景気に煽られて…。

その…どうしても、何とかできなかったんです…。

でも頭を抱えて考えている間にも、借金は増える一方で…。

だから、その…」

麻里子の父親は震える唇を動かしている。

「理由がどうであれ、今回の話はなかったことにいたします!

あなたの娘さんと私の息子との結婚はなかったことにさせていただきます!」

彼をさえぎるように、陽平の父親が怒鳴り返した。

「そんな、周さん…」

麻里子の父親ガタガタと震えて、今にもすがりつきそうな様子だ。

陽平の父親はそんな彼を視界に入れたくないと言うように、横を向いた。
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