嘘婚―ウソコン―
陽平が申し訳ないと思っていた…か。

「罪滅ぼし…ねぇ」

果たして、あの飄々とした態度の陽平に罪の意識なんてあったのだろうか?

千広は思った。

「まあ、とりあえず!」

パンッ!

園子が両手をあわせた。

「千広の離婚と新しいバイト先も決まったことだし、今からご飯食べに行きましょう!」

園子が椅子から立ちあがった。

「あたしの離婚って…」

千広は息を吐いた。

ここに誰もいなかったからよかったけど、もし誰かいて聞いていたら何事かと思うのではないのだろうか。

この場にいるのが自分と園子でよかったと、千広は思った。

「って言うか、仕事は?」

椅子から立ちあがって楽しそうに準備をする園子に千広が聞いた。

「んー、もうすぐお昼時だから午前の仕事終了」

その問いに、園子は笑いながら答えたのだった。
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