嘘婚―ウソコン―
「でもすぐに新しいところが決まってよかったね」

園子が笑いながら言った。

「あたしもそう思う。

だけど…」

「だけど?」

「変なものだよね。

戸籍を盗まれた男に危ないところを助けられるなんて」

千広は息を吐いた。

「彼も心のどこかでは悪いと思ってたんじゃない?

千広を偽装結婚の相手に選んだから、彼も申し訳ないと思ってたんでしょ。

その罪滅ぼしとして、千広に新しいバイト先を紹介したんじゃない?」

園子がクスクスと笑った。
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