嘘婚―ウソコン―
「そうか」

陽平は一言だけ呟くように言って、チューハイを1口飲んだ。

「あの…どうしてそんなことを?」

千広は聞いた。

「もし、あいつのケータイの番号が変わってなかったらTシャツを弁償してやろうと思って。

あいつ、1度根に持ったら怖ェからさ。

現にされた訳だし」

陽平は息を吐いた後、軟骨のからあげを口に入れた。

ボリボリと、軟骨を噛み砕く音が聞こえた。

「まあ、それもこれも全て5年前廃人状態だった俺のせいだけどな」

陽平は息を吐いた。

それから指でアクセサリーをつまみあげた。

「にしても、あいつまだ持ってたんだな。

俺の失敗作」

呟くように言うと、陽平は指先でガラスの靴をなでた。

千広はアクセサリーを見つめ、
「失敗作なんですか?

それ」
と、言った。
< 274 / 333 >

この作品をシェア

pagetop