嘘婚―ウソコン―
確かこの声は…。

千広はそっと、視線を向けた。

窓際のソファー席に座っていたのは、
「あ…亀山さん」

小田切の事務所で働くスタッフの1人、亀山と言う名前の男だった。

千広の中の彼の印象は、30代前半のまじめな男である。

亀山と一緒にいるのは、同じくスタッフとして働いている寺脇と言う男だ。

彼は亀山の同期だ。

2人共、仕事が終わったからスターバックスにきているのだろうか?

「ああ、周陽平のこと?」

寺脇が返した。

「そ、あいつ。

財閥の御曹司だか何だか知んねーけど、あいつもずいぶん偉くなったもんだよ」

亀山は呆れたと言うように息を吐いた。

「周さん…?」

陽平が、どう言うことなのだろうか?

2人はすぐ近くに千広がいることに気づいていないようだった。
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