嘘婚―ウソコン―
「全く、小田切さんったら質が悪いんだから…」

給湯室でほうじ茶を飲みながら、千広は呟いた。

「周さんのせいなんだから…。

周さんが発売前に、あたしに送ってくるから…」

いつかみたいに、陽平のせいにする。

「あっ…」

その声に視線を向けると、
「あっ…」

千広も思わず声をあげた。

亀山が給湯室に入ろうとしていた。

給湯室に気まずい空気が流れる。

「ああ、どうも…」

その気まずい空気を破るように、亀山が言った。

「どうもです…」

言われたので、千広も返した。

亀山は給湯室に入ると、やかんに水を入れてガスを点けた。

お湯を沸かしている間、もちろん会話はない。

お互い、気にしているのだ。

この間の、スターバックス事件のことを。
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