嘘婚―ウソコン―
彼女の視線は、陽平デザインのアクセサリーに注がれていた。

買おうとしているのだろうか?

彼女の唇が動いた。

「“Youhei.A”…?」

「周陽平です」

千広は声をかけた。

彼女が驚いたと言うように、千広に視線を向けた。

千広は得意げに微笑んだ。

ちょっと、彼女を驚かせてしまったかも知れない。

そう思うと、千広は笑いたくなった。

だけど、人がいる手前我慢する。

千広はネックレスに視線を向けた。

キラリと、羽のチャームが街灯の光に当たって輝いた。

「そのネックレスをデザインした彼は、今パリにいるんです」

彼女に視線を向けると、微笑んだ。

赤茶色の髪の男がデザインした、かわいらしいネックレス。
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