嘘婚―ウソコン―
千広は今見た夢を振り返った。

赤茶色の髪が印象的な、千広に話しかけてきた彼だった。

その彼が名乗ったのだ。

――“周陽平”、と。

まさか本当に、彼なのだろうか?

彼が周陽平なのだろうか?

考えるだけ考えても、答えは出てこない。

そもそも、彼が“周陽平”なのかそれすらもわかってないと言うのに。

その時、千広のお腹がグーッと鳴った。

「――そうだ、夕飯はまだだった」

千広は立ちあがると、夢の中の出来事を振り払いながらキッチンへと足を向かわせた。
< 40 / 333 >

この作品をシェア

pagetop