嘘婚―ウソコン―
「どうして、あたしの戸籍を盗んだんですか?」

千広は聞きたかったことを言った。

その問いに、陽平はピクリと片方の眉をあげた。

すぐにフッと笑うと、
「都合がよかったからって、言っただろ?」
と、答えた。

「…そんなんだったら、他の人でもいいじゃないですか。

あたしじゃなくても、別にいいじゃないですか」

「まあな」

陽平は息を吐いた。

「別にさ、何でもよくね?

俺が誰と結婚しても、ヒロには関係ないじゃん」

陽平の悪びれることない飄々としたその態度に、
「関係してるから言ってるんです!」

千広は思わず声を荒げた。
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