7 STARS
* * * * *


約束の時間、5分前に公園に向かうと、奏人はもうすでにベンチに腰かけていた。


「ごめん!待った?」

「ううん。それに7時前だし、ごめんはいらないよ。」

「寒かったでしょ?もうこっち、冬みたいに寒いし。」

「大丈夫。俺だって元はこっちの人間だし。」

「都会っ子になっちゃったかなーって。」

「バカにすんなっつの。」


私と奏人はゆっくりと公園を後にした。
手を繋ぐわけじゃない、微妙な距離が私と奏人の間には確実に存在している。


「幼稚園の先生になるための実習なんでしょ?」

「そうそう。向こうでやろうかとも思ったんだけど、俺、こっちに戻ってくるつもりだから。」

「え?そうなの?」

「そうだよ。ちょっと別の世界を見るつもりで大学は地元離れたけど、やっぱり戻ってきたいなって思うから。
だから実習先も、俺たちが行ってたひまわり幼稚園だよ。」

「えぇー!私も行きたい!」

「遊びにってことでしょ、菜々子の場合。」

「そうだけど?」

「俺は勉強しに行くんですけど。」

「えーいいなー私もちょこっと覗きに行こうかなー。」

「悲しい世の中になってんだから、不審者扱いされて捕まるよ。」

「不審者じゃないし、大丈夫だよ!」


他愛もない会話が嬉しくて、私の頬はゆるゆるとゆるんでいく。
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