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「落ち着いたか?」


涙が止まってきた頃合いで齊藤は声を掛けてきた。
汐織の方は涙は止まったものの、声が上ずってしまう。


「…いっ…一応っ…。」

「焦んなくていい。お前が落ち着くまでいるから。」


頭を撫でる手は止まらないままだった。
その心地良さに安心を覚える。


しゃがむのに疲れたのか、齊藤はそのまま草の上に座り込んだ。


「一応未遂、だよな?」

「え…?」

「なんかされたか?」

「あ、未遂です。でも…。」

「なんだ?」


急に齊藤の表情が曇った。というかむしろ怒りに歪んだと言うべきか。


「首筋、舐められました。すごく…気持ち悪かった…です。」

「どっちだ?」

「え?」

「どっちやられた?」

「えっと…あの…こっち側です。」


右の首筋を指差してそう答えた。



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