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その瞬間、長袖のジャージの上を羽織っていた齊藤が腕でごしごしと汐織の首を拭いた。
ちょっと痛いくらいに乱雑に。
でも、優しさは伝わる程度に。


「うわっ…ちょっ…齊藤先生!!」

「拭いた。一応。応急処置だとでも思っとけ。」

「は…はい…。」


そこで会話が途切れる。
…気まずさに耐えかねて口を開いたのは汐織だった。


「あの…齊藤先生…。」

「なんだ?」

「ありがとうございました。なんだか…助けてもらっちゃって。」

「いや、悪かったな。間に合わなくて。」

「いえっ…そんなことないです。充分助かりました。私の不注意…ですし。」

「それも否めない。」

「えぇー!?そうなんですか?」

「最近この辺で不審者が出てるっつーのは昨日の朝の職員打ち合わせでも言われてただろ?なに忘れてんだよ。」

「…ううっ…すいません。」

「大体、女一人で暗いとこわざわざ選んで帰る奴があるか!!」

「だって給食袋探さないとって…。」

「明日土曜だろ?明日の明るいうちにやろうとかそういう風には思わねぇのかよ?」


さっきまで優しく慰めてくれたのとは打って変わって、完全に叱られるモードに入ってしまった感じを、汐織はひしひしと感じていた。


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