7 STARS
とはいえ、小さい頃のように無邪気にその背中に全体重など預けられるはずもない。
相手が相手だけに羞恥よりも緊張が勝る。


「おい。」

「はっ…はいっ!!」

「なに遠慮してんだよ。外側に体重預けんな。重い。」

「すみません…ダイエットとかしてないので…。」

「そういう意味で言ったんじゃない。
もうちょっと前に体重かけろっつってんだよ。」

「そ…そう言われましても…なかなか緊張する…というか…。」

「緊張?」


ぎゃー…やっちゃった…本音言い過ぎでしょ私!!
と思ったときには時すでに遅しだった。
慌てて口を押さえたところで、出てしまった言葉を無かったことには出来ない。


「緊張すんなよ。もうすぐ着くしな。」


絶対にからかわれると思っていた汐織の予想は大きく外れた。
齊藤から返ってきた言葉には、びっくりするくらい無垢な優しさが含まれていた。
その言葉に安心して、汐織はほとんど体重を全てその背中に預けた。
少し風が冷たい夏の夜に、齊藤の背中の温さは心地良かった。
そして、齊藤の背中がこんなにも大きいということを改めて知った。


小学校の駐車場まで来て、ようやくゆっくりと地面に降ろされた。

< 54 / 268 >

この作品をシェア

pagetop