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腰に回った齊藤の手がぐいっと身体を起こしてくれる。
力が入らないものだから、汐織の方も齊藤のジャージにしがみついた。


齊藤との距離、ほぼゼロ。


…まるで抱きしめ合ってるみたい…なんて思うと頭が沸騰しそうになる。


「すっ…すみませんっ!!よろけちゃって…。」

「帰れないことが分かったか?」


耳元で齊藤の声を聞くのはこれが初めてだった。
慣れない距離に動揺して、声が出ない。
汐織は小さく頷いた。


「おんぶとだっこ、どっちがいい?」

「え?」

「車、学校だから。そこまで運ぶ手段としてどっちがいいかって聞いてんだよ。」

「え?あ…えっと…肩貸していただければそれで…。」

「お前に気を遣って歩くの面倒すぎる。
だっこかおんぶして全面的に体重預けてくれた方がラクだ。だから選べよ。
10秒以内に決めろ。じゃねーと…。」


齊藤の眉間に皺が寄った。…やばい。これは怒る、もしくは怒鳴る前のサインだ。
それを咄嗟に感じて汐織は1秒で判断を下した。


「じゃっ…じゃあおんぶでお願いしますっ!!」

「よし。」


すっと屈んだ齊藤の背中に遠慮がちに乗った。

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