7 STARS
去年からずっと、困った時に一番頼りになったのは齊藤だった。
ガツンと叱ってくれたのも齊藤だった。
でもちゃんとやれば褒めてくれたのも齊藤だった。
教師として何も分からない自分を、自分でも気付かない場所で支えてくれていたのは齊藤だったのだ。


―――惹かれないはずがないよ、私。
自分の心に訊き直す。


苦手だったんじゃない。
気になってたのに、見ないふりするために苦手なんて言ってたんだよ。
汐織は今、一つの答えに辿り着いた。


「上出来だ。」


満足げに齊藤はそう呟いた。
頭をそっと引き寄せられ、こつんと額がぶつかる。
二人で見つめ合えばそっと笑みが零れる。


唇が再び、どちらからともなく重なった。
合意の上ともあって、さっきのキスでは済まなかった。
経験値はどうやら齊藤の方が年の分だけ上なのだろう。
その舌に応えるだけで汐織の方は精一杯だった。


酸欠で少し身体がふらついた汐織はそのまま齊藤の胸に身を預ける。


「…そんなに激しくしてねぇけど。」

「ちょっ…仮にも教師がそういうこと言わないでくださいっ!!」

「教師だって男だろ。お前だって教師である前に一人の女だ。」

「それはっ…まぁ…そうですけど。」

「汐織。」

「え?」


不意に呼ばれたのが名前だったことが、二人の距離を変えたのだということを示している。
しかし突然過ぎて汐織は間抜けな返事しか出来なかった。


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