トリップ少女
若菜はわけが分からなくなった。


みんながみんな若菜一人を不審な目で見てくる。


可哀想なものを見る目も。


怒りの目もある。


-どうして翡翠を泣かせるようなことを言うの?


多くはそんな目だった。





「みんな聞いて!!若菜は多分ちょっとした記憶喪失よ!!私、若菜がさっきイルカと競争して岩に思いっきり頭をぶつけたところを見たもの」


その時、深緑色のロングヘアの人魚が思い出したように言った。



「やっぱそうよね~」


「若菜のいつものおっちょこちょいか!!」


「イルカに勝負を挑むなんて若菜もまだまだ子供ね」



人魚たちはクスクス笑いながら若菜を見た。


さっきまでの不審な目は一切消えていた。





< 19 / 164 >

この作品をシェア

pagetop